親族の行方や生死が不明な時には認定死亡や失踪宣告の活用を。
地震・豪雨災害等で残念ながら遺体も発見されず,親族の生死が不明な場合に残された遺族は,その財産に関してどのように処理することになるのでしょうか。遺族が,生活のために預貯金を引き出したり,不動産の名義を変更しようと思っても,本人ではないということで何の手続きもできないのでしょうか。特に,父に扶養されていた母子が父を災害で失ってしまった場合には,生活に窮してしまうことになります。
このような場合,一つには,認定死亡(戸籍法89条)を利用して,死亡の届を出して相続の手続きを行うことが考えられます。これは,災害等で死亡したことが確実だが,遺体が発見されない場合などに官公庁が取調べを行いその人が死亡したと市町村長に報告し,死亡の記載を行うことになるというものです。この戸籍の記載に基づき,相続の手続きを行うことができます。ただし,これは後に,生存が確認されると,この効力は消滅します。
また,災害等の「危難」が去った後1年経過すれば,その人が死亡したことと扱われることになる特別失踪という手続きを家庭裁判所に申立て,死亡したこととする旨の決定をしてもらうこともできます(なお,特別失踪の要件である「危難」がなく,単に行方不明の場合には7年経過した時に通常の失踪宣告を申し立てることになりますが,本件では「危難」に該当するでしょう)。失踪宣告がされれば,死亡したと扱われることが戸籍にも記載され,相続手続きを行うことができるようになります。
失踪宣告が認定死亡と異なる点は,後にその人の生存が判明したとしても,死亡したという扱いは家庭裁判所に失踪宣告を取り消す決定をしてもらわない限り変わらないという点にあります(逆に認定死亡は生存が確認されるとその効力は何らの手続きも行わずに消滅することになってしまいます)。
大切な親族が死亡するという事態に直面したときに,相続手続等の法的に複雑な手続きまで行わなければならないことは非常に戸惑われると思います。まずは,お近くの弁護士等の専門家に早めに相談し,まずは見通しを立てることが大切かと思います。