交通事故-消極損害:家事従事者の損害賠償

交通事故に遭った場合,賠償を求めることができる損害のひとつに「消極損害」があります。

消極損害とは,事故がなければ得ることができたにもかかわらず,事故により得ることができなくなった財産的損害のことをいいます。具体的には,

① 休業損害

② 後遺症による逸失利益

③ 死亡による逸失利益

があります。

この消極損害を算定するにあたっては,原則として事故前の収入を基準に算定します。

では,被害者の方が主婦であった場合にはどうでしょうか。主婦の方は,実際に収入を得ているわけではありませんが,家事労働の属する多くの労働は,社会において金銭的に評価されうるものであり,家事従事者が家事に従事することができなかったことによる損害を認めることができるとされています。

そして,その場合の収入は,女性労働者の平均賃金に相当する財産上の収益をあげるものと推定し,賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計・学歴計・女性労働者の全年齢平均賃金を用いるとされています。この金額は,令和元年では年収388万0100円になります。

また有職の主婦の場合には,実収入が上記の平均賃金を上回っているときは実収入によることになりますが,これを下回っているときは平均賃金で算定することとされています。

交通事故に遭った際の損害賠償額の算定にあたっては,複雑な点が多く,ひとつひとつの対応が損害賠償額に大きく影響していくことがあります。

交通事故に遭ってしまった場合には,まず弁護士に相談されることをお勧めします。