「会社に来なくていい」と言われたらどうする?

Q 先日,勤めている会社の上司から,「明日から来なくていい」と突然言われました。どうすればいいでしょうか。

A 1 「解雇」か「退職勧奨」か確認を!
     まず,その職場の上司(ないし社長や総務課等の人事担当の上司)に対して,あなたを「解雇」するという意味なのか,それとも「退職してほしい」という「退職勧奨」の意味なのか,きちんと確認し,明確にする必要があります。
  「解雇」は,使用者が労働者との労働契約を一方的に解約する行為ですが,「退職勧奨」は,労働者が了解するのであれば退職してほしいという使用者側の希望・申し込みにすぎず,労働者は退職勧奨に応じるかどうか自由に判断することができます。

  2 「解雇理由」を明らかにしてもらいましょう!
    「解雇」の場合,まず「解雇理由」を明らかにするよう求めることが重要です。労働者が使用者に対し「解雇理由」について証明書を請求した場合,使用者は遅滞なく交付しなければならない義務があります(労働基準法22条2項)。

  3 解雇理由が合理的な理由を欠くと解雇は無効です!
 さらに,労働契約法は,解雇は「客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする」と定めています(労働契約法16条)。また,期間の定めのある労働契約の場合は,「やむを得ない事由がある場合でなければ,その契約期間が満了するまでの間において,労働者を解雇することができない」と定め,原則として解雇が出来ないよう定められています。
  解雇理由の内容等によっては,そもそも法令で解雇が禁止されている場合があります。例えば,男女雇用機会均等法では,女性が結婚,妊娠,出産したことを理由として解雇してはならないと定めています。その他にも,労働組合に加入していることを理由とする解雇等,不当な解雇について法令で禁じられています。

  4 なるべく早く相談をしましょう! 
  不当解雇が疑われる場合には,早めに労働組合や各種行政機関,弁護士等に相談してください。
  また,正当な解雇に当たる場合でも,「解雇」する場合は,使用者は原則として,30日前に解雇を予告する必要があり,もし30日前に解雇予告をしないで解雇する場合には,「解雇予告手当」として「30日分以上の平均賃金」を支払う義務があります。その他,勤務していた会社に退職金に関する規定や慣行があれば,退職金の請求もできるはずですので,確認する必要があります。
  また,「解雇」ではなく「退職勧奨」だという場合には,前述したとおり,労働者は退職勧奨に応じる義務はありません。あなたが会社を退職したくない場合には,退職勧奨に応じるつもりがないことを明確に伝える必要があります。
  しかしながら,現実にはそれでもさまざまな手段で,しつこく退職を強要する事例も多くみられます。その場合には,執拗な退職勧奨ないし退職強要をやめるよう,内容証明郵便などで通告する方法もあります。不当な退職強要によって書かされた退職届は撤回できる場合もあります。
  退職勧奨がパワーハラスメントに当たるなど,社会通念上の相当性を欠く場合には,違法な退職勧奨・強要として,会社に対し不法行為責任を追及できる場合もあります。
  このような場合にも,早期に労働組合や各種行政機関,弁護士等に相談してみてください。