介護事故の事案での解決事例紹介

・Aさんは,持病の影響から日常動作のうち食事・入浴等の介助が必要な老婦人で,在宅介護サービスを受けていました。ある日,Aさんがヘルパーの介助で入浴していた際,介助用の椅子が倒れ,浴槽にいたAさんの頭部を直撃するという事故が発生しました。医師は「外傷性頸部症候群」と診断しました。事故前のAさんは,持病のため身体機能の一部が不全でしたが散歩等はできていましたが,事故のため持病が急激に悪化して寝たきりの状態となり,自宅を売却して施設に入所せざるをえない状態になりました。

・Aさんが当初相談したB弁護士は,Aさんの了解も得ず,ヘルパーを派遣していた業者に100万円を請求。しかし,相手の回答は,事故と後遺症に因果関係がないので一切支払う必要はないという回答でした。

・その後,AさんはB弁護士の代わりに当事務所に事件を依頼。当事務所は,相手方を被告として損害賠償を求める裁判を提起し,事故前は持病のため後遺症5級相当であったが,事故により3級相当に悪化したと主張し,損害として後遺障害慰謝料,自宅売却に伴う諸費用,施設入居費用等を含め3000万円の損害賠償を請求しました。裁判の結果,裁判所から,素因減額(被害者が事故前から有していた精神的ないし肉体的要因のために損害が拡大している場合に,その要因を考慮して損害賠償額を減額すること)はあるが1750万円の和解金を支払うよう被告に提示され,被告も最終的には裁判所の和解案を受け入れて和解が成立。和解金全額が無事支払われました。 結果として,前の弁護士が提示した約17倍の和解金を取得でき,Aさんにとって素晴らしい解決となりました。

・前の弁護士は,事故直後にAさんが行った病院の医療記録のみ調べ,Aさんや,その家族から過去の病状について事情聴取していませんでした。
 これに対し,当事務所では,事故前のAさんの医療記録を全部取り寄せ,事故前にAさんを診ていた医師にも面会,事故後にAさんを診ていた医師にも面会し,その内容を裁判所に提出しました。さらに協力医からAさんの事故前の持病について複数回のレクチャーを受け,医療文献も収集して裁判所に証拠として提出。施設に入所し寝たきりになってしまったAさんの下にも何度も足を運び,聞き取りを重ね,余命が知れなかったため早期に証拠保全でAさんの尋問も実施するなど,あらゆる立証の努力を重ねました。さらに,その内容を裁判所に分かりやすく伝えるため,事故現場で撮影した写真等を用いるなど視覚に訴えるビジュアル資料を利用する等の工夫も重ね,専門的な医学的知識については裁判所に分かって貰うためのプレゼンテーションを行う等,あらゆる工夫を重ねました。まさに執念と努力・工夫の積み重ねが勝因となりました。