刑事裁判での「反省」の意味
刑事事件でのニュースなどでは,訴えられた被告人が「反省」しているかどうかが注目されて報道されます。悪いことをしているのに自分のやったことの悪さを実感していない,そんな人間は許せない,というような感情を被害者が持つことは当然のことだと思います。また,一般的にもそのような人間は,とんでもない人間だという評価をうけることもあるでしょう。そのような感情が生じるのは自然なことです。
しかし,刑事裁判は,刑罰を定める手続きです。被告人の反省の態度や被害者の方々などに生じた感情は,刑事裁判にどのように反映されるのでしょうか。
このことは,難しい問題ですが,裁判員裁判が始まるときに一般の国民が裁判員裁判で刑罰の重さを決めるとなったときに,最高裁判所の一機関である司法研修所の編集で「裁判員裁判における量刑評議の在り方について」という本が出版されました(法曹会,平成24年,以下「司法研究」といいます)。
この司法研究の中で,被害者の「反省」を刑罰にどう反映させるかという記述もされておいます。その記述が,現在でも一つの指標となっています。司法研究においては,被告人の反省は「矯正指導を素直に受け入れる可能性の程度を推知する事情として,特別予防の一事情として位置付けられることになろう。」とされています。反省していれば,ちゃんと立ち直るために努力して再犯をしないだろうということです。
他方で,被告人が反省していない場合には,それ自体で重い刑を科することは黙秘権の保障との関係や刑法が思想や内心それ自体を処罰するものではないことからして問題があるとされています。
つまり,反省をしているかどうか自体ではなく,そのことから再犯の可能性があるのかないのか,ある場合にはどの程度あるのか,ということが刑罰の重さに影響することになります。
冒頭でも書きましたが,被告人の反省が刑事裁判にどのように反映されるべきかは難しい問題です。しかしながら,再犯をするということは,新たな被害者を生むことにもなり,被告人自身にとってもよいことではありません。
当事務所としては,刑事裁判で弁護を行う際に,被告人の方と一緒に同じことを繰り返さないために何ができるかを考えるだけではなく,時には,精神科医,カウンセラー,ソーシャルワーカーの方々などと協働して,被告人の方をサポートする活動も行っています。結果として,被告人の方の内省,反省が深まっていく様子も目の当たりにしてきました。
今後とも,社会の不幸を減らすために,このような活動に尽力していきたいと思っています。
弁護士 屋宮 昇太