労働条件明示のルールが変更されます
1 2024年4月1日からの変更概要
労働基準法では、労働契約の締結時に、一定の事項について労働条件を書面等で明示することが使用者に義務づけられています(労働基準法第15条)。具体的な明示事項は労働基準法施行規則(以下「労基則」といます)に定められていますが、同法の改正により、2024年4月1日以降、以下の明示事項が新たに追加されることになりました。
① 就業場所・業務の変更の範囲(労基則第5条第1項第1号の3)
② 更新上限の明示(労基則第5条第1項第1号の2)
③ 無期転換の申し込み機会の明示(労基則第5条第5項)
④ 無期転換後の労働条件の明示(労基則第5条第6項)
変更内容のポイントについて解説します。
2 就業場所・業務の変更の範囲
すべての労働者に対し、労働契約の締結・有期雇用契約更新の際に、「就業場所・業務の変更の範囲」を明示することが必要になります。「就業場所」及び「業務内容」の明示は、改正前から義務付けられていましたが、今回の改正で「変更の範囲」の明示も付け加わりました。
「変更の範囲」とは、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の範囲を指します。
想定が難しい場合は、労働条件通知書において、就業場所・業務の変更の範囲をなるべく広く記載しておく必要があります。
3 更新上限の明示
改正後は、有期契約労働者に対し、有期労働契約の締結・更新の際に、「更新上限」の有無と内容を明示することが必要になります。
「更新上限」とは、有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限のことを言います。
同改正に伴い、有期労働契約締結後に、①更新上限を新たに設ける場合、または②上限を短縮する場合は、事業者はその理由をあらかじめ説明することが必要となりました[「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準第1条」(平成15年厚生労働省告示第357号)]。
4 無期転換の申し込み機会の明示
有期労働契約が5年を超えて更新された際、有期労働契約者には、無期労働契約(期限の定めのない労働契約)に転換を申し込む権利が発生します(労働契約法第18条)。
改正後は、「無期転換申し込み権」が発生した際には、有期労働契約者に対し、「無期転換への申し込みが可能であること」を明示することが必要になります。
5 無期転換後の労働条件の明示
また、改正後は、「無期転換申し込み権」が発生した際に、有期労働契約者に対し、「無期転換後の労働条件の明示」が求められます。
6 上記のルール改正に対応するため、企業は、労働条件通知書の見直し等を行う必要があります。
当事務所では、労働条件通知書の作成等の業務も行っておりますのでご相談ください。