改正公益通報者保護法
令和4年6月1日より、改正公益通報者保護法が施行されました。
従来より、リコール隠しや食品偽装などの企業不祥事が、内部の労働者や取引先などからの通報で明らかとなり、このような公益のために通報を行った労働者が、不利益な取り扱いを受けることのないよう、公益通報者保護制度は存在していました。
今回の改正は、事業者自らが不正を是正し易くするとともに、安心して通報を行い易くするところに狙いがあり、それにより早期是正と被害の防止を図ることができるので、事業者にとっても有益な法改正であるということができます。
もっとも、従業員数が300名を超える規模の事業者に対して内部公益通報対応体制の整備(窓口設定、調査、是正措置等)が義務化され、同法11条の規定に基づいて事業者がとるべき措置に関して適切かつ有効な実施を図るために必要な指針が定められており、この指針に定められた体制整備が未了の事業者に対しては、事業者名公表等のペナルティが課さされる可能性があるため、改正法の施行に向けて、きちんと対応する必要があります。
また今回の改正の目玉の一つは、内部調査等に従事する者に対し、通報者を特定させる情報の守秘を義務付け、同義務違反に対しては刑事罰を導入したことにあり(同法12条、21条)、このような事態に至らないようにするためにも、改正法の内容をしっかりと理解して対応する必要があります。
そもそも上記に該当する事業者においては、果たして、どのような通報窓口を設置すればよいのか、またどのように調査をすればよいのか、どのような通報が公益通報になるのか、通報する内容はどのようなものであれば、この法律による保護・規制を受けることになるのかなど、この法律及び上記指針を正しく理解しなければ、正しい運用をすることができません。しかも、通報対象となる法律は、令和4年5月1日現在で480本もあり、このような法的な枠組をきちんと理解して適切に運用するためには、事業者にとっては、我々弁護士等の専門家の意見を求めることも有用なことと思います。事業者によっては、既に顧問弁護士と顧問契約を締結されている場合もあると思いますが、今回の改正法では、組織の長やその他幹部に関係する事案については、これらの者からの独立性を確保する措置をとることが求められており(上記指針参照。法11条2項関係)、そのような場合には、顧問弁護士ではなく、事業者外部の法律事務所に助力を求めたり、相談したりすることも検討されてよいと思います。当事務所は、この分野の勉強会も重ねてきており、サポートすることが可能ですので、お気軽にご相談ください。