自筆の遺言書の日付に関する最高裁判所の判例紹介

 自筆の遺言は、遺言が成立した日の日付を記載しなければならないという最高裁判所の判例があります。

 では、遺言が成立した日は遺言者が押印した日付で、本来、遺言書に、その日の日付を記載しなければならなかったのに、これとは異なる日付を遺言書に記載してしまった場合、このような遺言書は全て無効になるのでしょうか。

 令和3年1月18日に出た最高裁判所の判決は、遺言をした人が病院に入院中に遺言の全文と、その日の日付、氏名を自分で書き,その病院を退院してから9日後(遺言の全文・日付等を書いてから27日後)に印鑑を押印して自筆の遺言書を完成させたという事案で、遺言書に押印して遺言が成立した日と異なる日の日付が記載されているからといって直ちに遺言が無効となるものではないと判断し、このような遺言を無効と判断した高等裁判所の判決を破棄しました。

 その理由は、民法が自筆の遺言に、遺言の全文,日付、氏名の自書、押印を必要とした趣旨は,遺言者の真意を確保すること等にあり、必要以上に遺言の方式を厳格に解釈すると,かえって遺言者の真意の実現を阻害するおそれがある、というものでした。

 高等裁判所の判断と最高裁判所の判断が分かれた、とても興味深い最高裁判所の判例です。

 この他、様々な遺言の有効性に疑問がある場合など、遠慮なく当事務所に御相談下さい。