罪を犯した人の更生を促進するために刑法が改正されます。

 令和4年6月17日に公布された「刑法等の一部を改正する法律」が令和7年6月1日から施行されます。

 今回の改正は、罪を犯した人の更生を促進するための内容が盛り込まれています。この中でも注目すべきなのが「拘禁刑」の創設です。これまでの身体拘束を伴う刑罰は、「懲役刑」と「禁固刑」の2種類でした。「懲役刑」は、刑務所内の工場で働く等の刑務作業を行う必要があったのに対して、「禁固刑」はそれが科されないということで「禁固刑」の方が軽い刑罰とされてきました。今回の改正は、この2つを「拘禁刑」として一本化するものです。

 改正刑法12条3項は、「拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる。」とし、刑務作業を課することを義務的なものとせず、「改善更生」を全面的に打ち出す矯正処遇を行うべきであることが明記されました。

 刑罰は、犯罪行為に対する「制裁」であるとされ、受刑者への「教育」はその範囲内で行われるものであるとされます。今回の改正はこの考え方までも変化させるものではありません。

 しかし、今回の改正は、この「教育」の側面を重視するものです。今後、受刑者の処遇は、受刑者の個性を重視しない集団的・画一的なものから、受刑者の個性を重視した個別的な指導・教育に変容していくものと思われます。

 既に、刑務所では、障害を抱える受刑者に対して、医療や福祉と連携した個別処遇がモデル事業として実施されるなどし(札幌刑務所:精神障害の受刑者対象、長崎刑務所:知的障害の受刑者対象)、来年の施行に向けた準備は着々と進められています。

 このほか、今回の改正は、保護観察付執行猶予判決を言い渡された被告人が再犯をした場合、これまで再度の執行猶予判決を言い渡すことが出来ませんでしたが、これが出来るようになるなど、全体的に罪を犯した人の改善更生を促進する内容となっています。

 弁護士としても、このような時代の流れの中で、より一層、罪を犯した人の生き直しに協力できるような活動をしていきたいと思っています。