離婚後の共同親権の選択認める民法改正

  1. 欧米では、1970年代から、単独親権の制度を改め、離婚後共同親権制度が導入されていました。離婚後も父母双方に親権者としての責任を負わせ、日常的な監護は一方の親が行うとしても、別居している他方の親との面会交流を充実させるなど、単独親権制度の弊害を除去するためでした。
  2. 日本も、これまで離婚後の共同親権導入の議論がされてきましたが、様々な反対意見もあり、見送られてきました。
  3. そのような中、ようやく今年5月17日、離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」の導入を柱とした民法改正が成立しました。改正の趣旨は、家族や子育てのあり方等が多様化する中、最優先すべきは「子どもの利益」であり、父母が離婚しても、子どもが最善の利益を得られる環境を整えたいというものです。
  4. 離婚後に父母の一方にしか親権を認めない「単独親権」に限定している現行制度を改めて、父母が協議して「共同親権」も選択できるようになります(選択肢が増えるということです)。協議が調わない場合は、家庭裁判所が「子供の利益」や家族関係等を踏まえて、どちらにするか判断します。家庭内暴力(DV)や虐待が生じる恐れがある場合は、家庭裁判所が単独親権者を決めます。
  5. 共同親権のもとでは、進学・手術・転居など子供に関する重要な決定をする際には原則として父母双方の合意が必要とされます。もし合意できない場合は家裁が判断します。これに対し、日常の行為や急迫の事情に当たる行為は単独で判断できます。
  6. 今回の改正法は、2026年までに施行される予定です。改正法施行の前に離婚した夫婦でも、裁判所に親権変更の申し立てをして単独親権から共同親権に変更できるようになります。
  7. このほか、養育費の不払い問題(ひとり親世帯の大半が母子世帯で、そのうち養育費支払いの取り決めがあるのは約46%、実際に受け取っているのは約28%にとどまる現状の改善の必要性)の対策として、「法定養育費」も創設されました。これは父母の合意がなくても最低限の額の養育費の支払いを法的に義務付けるものです。子供との面会交流についても、調停手続の早期の段階で「試行」を促す新制度や、父母以外にも一定条件のもと祖父母や兄弟姉妹らにも面会交流申立ての権利を認めるなど、注目されます。