個人情報保護法の課徴金制度の検討について
現在、個人情報保護法では、個人情報取扱事業者等が個人情報保護委員会からの命令(148条2項と148条3項)に違反した場合、行政上の監督や罰則の規定はありますが(178条、184条)、独占禁止法等のような課徴金に関する規定はありません。
このため、経済的メリットが上回る場合の「やり得」(違反行為から得た経済的利益を保持すること)を実効的に防止できない等の問題があり、諸外国における制裁金制度や、その執行状況等も参考に、わが国でも課徴金制度の導入について検討が重ねられてきました。
(参照:https://www.ppc.go.jp/files/pdf/20240926_kentohkai_shiryou-3.pdf)
令和6年12月18日、個人情報保護委員会事務局は、課徴金制度に関する検討の方向性について、違反行為の抑止効果を強化する必要があるが、他方で過剰な規制を回避する必要もあること等の観点から、諸外国における制裁金制度の導入例が多いことも踏まえ、少なくとも、課徴金制度の対象について、深刻な個人の権利利益の侵害につながる可能性の高い次のような類型に限定すべきではないか等の検討状況を公表しています。
①本人の同意を得ずに個人情報を第三者に提供する等、緊急命令(個人情報保護法148条3項)の対象となっている重要な規制(※)に違反する行為類型を対象とし、剥奪すべき違法な収益を国内外で現実に得ている場合(例えば、破産者の氏名、住所等の個人情報を、本人の同意を得ずに、インターネット上で違法に公開し、当該公開を止めることの対価を本人から受け取るような行為や、違法行為を行う者に名簿・個人データを転売する者と知りながら当該販売先に名簿・個人データを販売する行為)
※個人情報保護法のうち、
18条(利用目的を超える利用の禁止)
19条(不適正な利用の禁止)
20条(不正な手段による取得の禁止)
27条1項(第三者提供の制限)
②事業者が安全管理措置義務に違反したことによって、大規模な個人データの漏えい等が発生してしまった場合
(詳しくはこちらをご確認ください↓
https://www.ppc.go.jp/files/pdf/20241218_kentohkai_shiryou-1.pdf)
ただし、課徴金については、まだまだ反対意見も多く、実際に法律に盛り込まれるまでには時間がかかることが予想されます。今後も、動向を見守っていきたいと思います。