民事訴訟法の改正について(第3弾)
これまで紹介してきた民事訴訟法の改正(令和4年5月18日成立)は、民事訴訟のIT化を主目的としたものでした。
ただ、今回の改正には、IT化以外にも、当事者等の住所・氏名の秘匿制度や法定審理期間訴訟手続といった新制度の創設も含まれています。
今回は、法定審理期間訴訟手続について紹介したいと思います。
- 法定審理期間訴訟手続とは
法定審理期間訴訟手続とは、当事者双方の申出・同意があれば、一定の事件につき、手続開始から6か月以内に審理を終結し、そこから1か月以内に判決をするという制度です(改正法381条の2~381条の8)。
従来の民事訴訟法には、審理期間を定めた規定がなく、審理終結時期の見込みが立てられませんでした。そこで、紛争解決の迅速性を高めるため、今回新設されました。
- 要件について
この制度は、
① 消費者契約に関する訴え及び個別労働関係民事紛争に関する訴え以外の訴えであること(改正法381条の2第1項但書1・2号)
② 当事者の双方が申出をするか、当事者の一方が申出をして相手方が同意すること(改正法381条の2第2項)
③ 裁判所が、事案の性質等に鑑み、法定審理期間訴訟手続により審理および裁判をすることが当事者間の衡平を害し、又は適正な審理の実現を妨げると認めるときでないこと(改正法381条の2第2項)。
といった要件のもと、利用することができます。
- 通常手続への移行
ただし、この制度を用いたとしても、必ず6か月以内に終結させなければならないというわけではありません。
当事者の双方又は一方が通常の手続に移行させる旨の申出をしたときや、裁判所が法定期間に審理・裁判することが困難と認めるときは、いつでも、通常の手続に移行することができます(改正法381条の4第1項)。
- 不服の申立て
さらに、法定審理期間訴訟手続には、不服申立ての手続に大きな特徴があります。
法定審理期間訴訟手続の終局判決に対しては、訴え却下判決である場合を除き、控訴をすることはできないのです(改正法381条の6)。
ただし、判決書の送達を受けた日から2週間以内という期間制限のもと、異議の申立てをすることができます(改正法381条の7)。異議が認められれば、訴訟は、口頭弁論終結前の状態に復し、通常の手続により審理及び裁判がなされることになります(改正法381条の8)。
つまり、期間制限のない通常の訴訟手続としてやり直しになるということです。
- まとめ
法定審理期間訴訟手続は、公布の日から4年以内に施行される予定です。新設されたものであり、施行後にどの程度活用されるかは、未知数なところはあります。
当事務所も、今後の実務の動向を注視してまいります!
詳しくは、法務省のHPをご覧ください。