離婚と財産分与(2)

問)財産分与の話し合いを行う上で,何が必要になりますか。

答)「財産分与」は,夫婦が婚姻してから離婚するまでの間に,夫婦が共同で形成してきた財産について,その清算を求めるものです。

  夫婦が婚姻中に購入した住宅(不動産)や婚姻中に形成してきた預貯金などは,たとえ夫婦のいずれかの単独名義になっている資産であっても,財産分与の対象になります。

  したがって,財産分与について話し合う場合,まず対象となる財産を明らかにするため,夫婦それぞれの名義の不動産や預貯金,株式などの財産の内容が分かる資料(登記事項証明書,通帳の写し,取引明細書など)をお互いが開示することが必要になります。

  ただし,夫婦といえども,相手方の名義の財産について,すべて正確に把握していないことは多いでしょう。また,離婚の協議中は相手方が財産分与の資料開示に協力してくれないことも多々あります。

そこで,離婚協議の準備の一つとして,できる限り事前に相手方の財産の情報や証拠を集めておくことが重要になります。

  財産分与について夫婦の話し合いで決められない場合,家庭裁判所での家事調停や家事審判などの手続により決めます。この場合にも,財産に関する資料については,家庭裁判所が調査するのではなく,まずは当事者双方に,それぞれが管理する財産の資料を公平に開示するよう,裁判所から要請されます。

  こういった手続きの時に,「相手方が明らかにしないのに,自分の名義の財産を明らかにしないといけないのでしょうか」という意見が出ることもありますが,基本的には,相手方が財産分与に関する資料を開示してこないからといって,こちらが資料を開示しなくていい理由にはなりません。財産分与を求めるのであれば,まず自分の財産に関する資料を明らかにすることが必要になります。

  ただし,相手方が裁判所から説得されたにもかかわらず,どうしても財産の資料を開示しない場合,家庭裁判所を通して金融機関等に対する調査嘱託や文書提出命令という手続きが取られることがあります。これらの手続きは,例えば相手方が口座を有している銀行に対して残高を照会するなど,第三者から相手方の財産に関する資料を開示してもらうことができます。

  しかし,この調査嘱託等の手続きを行うためには,例えば相手方がどの金融機関と預金取引を行っているのか等,調査の前提となる情報を示す必要があります。

  このように,夫婦間で直接話し合うにせよ,家庭裁判所での手続きを利用するにせよ,財産分与にあたっては,できる限り事前に相手方の財産の情報や証拠を集めておく準備が重要になります。