【解決事例】妻に生前贈与した自宅を維持することができました(破産申立事件)

 

 依頼者は,会社経営者(代表取締役)でしたが,経営が上手くいかず,会社を倒産させるとともに,会社の債務の連帯保証人となっている依頼者個人も自己破産の申し立てを行うこととなりました。

 依頼者は,高齢であり,持病もあったので,会社の業績が悪化する直前に,生前贈与として,依頼者名義の自宅を妻に贈与していました。依頼者は,婚姻期間20年以上の夫婦間の2000万円以下の居住用不動産の贈与が非課税になるという制度を利用して贈与を行ったのであり財産隠し等の意図を有していなかったのですが,贈与を行ったのが,会社の業績が悪化する直前であったことから,贈与行為が詐害行為否認(破産法160条1項1号)の対象となる可能性がありました。

 詐害行為否認とは,破産者が,「債権者を害すること」(詐害行為性)を「知って」法律行為を行った(詐害意思)場合に,破産管財人が当該法律行為の効力を否定することをいいます。本件で贈与行為が否認された場合,自宅の登記名義は妻から依頼者に戻され,破産手続きの中で売却されることになるため,自宅に住み続けることはできなくなってしまう状況でした。

 贈与行為の詐害行為性は,贈与が実質的危機時期に行われた場合に認められます。そこで,

 当職らは,破産申立の準備段階から,贈与行為を行った当時の会社の経済状況について緻密に調査を行い,贈与行為の当時は,会社の経営は順調であり,危機時期になかったことを裏付ける資料の収集に努めました。そして,破産申し立て後,破産管財人に対して,会計帳簿等の資料を提示しながら,上記の調査結果について丁寧に説明を行いました。

 その結果,破産管財人に,「贈与行為は実質的危機時期に行われたものではない」と正しい判断を行ってもらうことができ,依頼者の妻は自宅を維持することができました。

 今後も依頼者の利益を最大限に守るため,粘り強い弁護活動をおこなって参ります。